<剣舞と剣武>表記の違いであり、同じ意味。
最初のスタートは「剣で舞う」=「剣舞」であったが、全国的に広がっていく時期に、舞(ダンス)に流れすぎて武道要素を疎かにする人が多くなったことから、一部の流派で剣舞の「舞」を同じ発音の「武」に置き換えられた経緯がある。現代までそのまま「剣武」の表記にしている流派もあれば、剣舞に戻している流派もある。日本吟剣詩舞振興会および全日本剣詩舞道連盟では、いずれも「舞」の表記としている。
★当校では、武を大事にすることを前提にした上で、舞として表現することが剣舞であると考えているので、剣舞と表記しています。
<詩舞と扇舞>表記の違いという考え方と、そうでない考え方がある。
表記の違い:
剣舞から派生したものが扇舞(刀を扇に持ち替えたのが始まり)であるが、同時期か後の時代に、一部の流派が扇舞を詩舞と呼ぶようになった。すなわち剣舞と詩舞を合わせたものが「剣詩舞」である。 全国組織団体が剣詩舞の表記を採用したことから、一般的になった。
そうではない考え方:
一方で、詩舞と呼ばずに、剣舞と扇舞を合わせて「剣扇舞」と表記する流派もある。これらの流派においては、大分類としての詩舞(詩吟に合わせて舞う)の中に、小分類の剣舞と扇舞が あるとされる。
★当校では字面の分かりやすさから、「剣舞・扇舞」という表記を使っています。
<吟舞>
字の組み合わせとして、
①「吟と舞」
②「吟に合わせて舞う」
の二つの考え方を取ることができる。
★当校の会社名「株式会社吟舞」は、これが由来です。
<吟剣詩舞とは>
・吟詠
・剣舞
・詩舞(扇舞)
の総称。
全国高等学校総合文化祭の種目名としては、吟詠剣詩舞と表記されている。
★当校では
大分類「吟舞」
小分類「剣舞」「扇舞」
の表記で統一しています。
100から200と言われますが、正確なところは分かっていません。500人以上のお弟子さんがいる大きな流派もあれば、お弟子さんが1人しかいない流派もあり、他の舞踊系芸能(日本舞踊など)と同じく、分派も頻繁にされるため、正確に数えることは困難です。体感としては全国の愛好者は5000人程度ではないかと思います。
当校では、剣舞を紹介する際に、一部の地域や一部の人だけが取り組むものではないことをお伝えするために「全国に100以上の流派がある古典的な舞台芸能、剣舞」とよく説明しています。
江戸幕末期の昌平坂学問所(昌平黌)にて、若い武士の子息たちが酒の席で刀を手に吟じながら舞ったのが直接の起源とされています。明治初期に撃剣興行(剣術の試合を相撲の取り組みに倣って観客に見せるもの)の合間に剣舞が披露され、全国に人気が広まりました。撃剣家の一人、日比野雷風が明治中期に神刀流を創流し、吟士と舞手を分ける様式が定着しました。
最もシンプルな剣舞の舞台は、舞台中央の舞手(剣士)と、舞台の脇にいる吟士の二人だけで構成するものです。吟士の朗々とした吟声と、剣士の力強い舞とで、それだけでも大変迫力があります。
伴奏音楽には、お箏(琴)と尺八といった日本の古典楽器がよく用いられますが、音楽再生機器が発達した戦後は、オーケストラ演奏などの伴奏に吟が挿入されたCDも多数販売されています。
もともとは剣術家が自らの刀で舞っていたものですので、当然ながら真剣でした。しかし、真剣を使うことで、舞としての表現力に制限が出てくるため、現在では模擬刀(居合用の武道刀もしくは日本舞踊で使われる舞刀)を使用する人がほとんどです。
サムライの舞に扇を使うと聞いて、多くの方が大変驚かれます。
刀だけで漢詩や和歌の世界を表現するのは限界があります。扇を使うことで、詩歌に詠まれた風景や心情、場面を生き生きと表現することができます。
剣舞に初めて触れた人からはよく、剣舞は武道なのか、舞なのか、演劇なのかと問われます。武道を経験した人からは、剣道や居合との違いを尋ねられますし、武道よりも舞に馴染みがある人は、日本舞踊や能楽との比較から剣舞について理解しようとされます。そして、多くの方にとって、どれだけ言葉で説明を受けても、実際の物を見るまで、演劇から誕生した殺陣との区別がつかないようです。
以下、剣道および居合、日本舞踊、殺陣との違いを簡単に紹介しましょう。
① 剣道・居合
剣道は武道あるいはスポーツで、竹刀を用いて一対一でルールにもとづいて試合を行い、勝敗を決するものです。それに対し、剣舞は、刀と扇を使用し、漢詩などの詩歌に詠まれた内容を舞台上で表現するもので、明確なルールにもとづいて勝敗を決する性格のものではありません。
次に居合は、仮想敵を設定し、敵の動きに対して抜刀し、一撃で相手を制することに主眼を置く武道の一つです。剣舞で用いられる刀法は、居合の抜刀術が基本であり、多いに共通点があります。しかし大きな違いは、漢詩や和歌に合わせるという点と、見た目の美しさを重視する点です。舞台芸能である剣舞は、個人の技術や内面の精神性が重視されるだけでなく、鑑賞する人の存在を意識し、「美」を追求する発想が中心にあること、そして演出が行われる点が、武道とは大きく異なります。
② 日本舞踊
日本舞踊は、広義には日本の踊りの総称であり、剣舞もその一つに数えられますが、狭義には元禄期に歌舞伎から舞踊の要素を抽出して創られた歌舞伎舞踊を指します。歌舞伎舞踊は、元禄期の経済力豊かな町民によって支えられ、形成されてきた芸能です。それに対して、剣舞は剣術を発端とし、武道を嗜む武士らによって作られてきた芸能で、成立過程が大きく異なります。ただ、特に扇の扱いなど所作の面では、日本舞踊から多くを学んでいるといえます。
③ 殺陣(たて)
殺陣は時代劇の映画や舞台における一場面として考案された演劇技術の一種です。刀は軽い竹製のものが多く、演出監督の指揮のもとで、武道的な確かさよりも立ち回りの激しさや戦いの臨場感といった演出効果が重視されます。それに対し、剣舞は、すり足を基調とした振付により演舞を行い、居合刀など、やや重みのある刀を用い、居合道と共通する稽古も行います。また、多くは家元制度により技が継承される特徴があります。
全国の教室で、たくさんの女性が剣舞を学んでいます。
剣舞は武人(日本の武士、中国の兵士など)を表現する舞ですので、女性であっても衣装は男性仕様の着物と袴、所作も武人らしい堂々とした所作であるべきとされています。
その上で、女性ならではの「しなやかさ」が自然に醸し出されていくと、その方の個性として魅力ある剣舞に仕上がるでしょう。